【覇道】

 

<Act.1 『初めての学園』  最終話 『死の淵からの帰還』>

 

 

 

 

 

「……ん、んん……」

「蓮治っ!」

 

体の妙な気だるさを感じる

なんか変な感じだ……

そう思いつつも、青葉あおばの声が聞こえたので目を開ける

連休後みたいなこの気だるさはなんなんだろう……

 

「あれ? ……ここは?」

「蓮治っ! 蓮治ぃ〜〜〜っ!!」

「お、おいおいっ!?」

 

見えたのは白い天井

そして消毒の香り……

体を起こしてみれば周りはベッドや、カーテンって――病室?

訳がわからないまま、青葉は目に涙を浮かべて俺に抱きついてきた

おいおい! 人目もあるのに大胆じゃないか!

とはいえ、愛しい彼女の尋常じゃない様子に俺はただ青葉を強く、抱きしめた

 

「ぅっく……よかった……よかったよぉ……」

「青葉、おまえ……」

 

泣いている青葉

普段は気丈に振舞っている青葉がこんなに泣くなんて……

頭も少し覚醒してきて、青葉を強く抱きしめる

安心させるように

もう泣かないように

俺の大事な愛しい人を悲しませないように

 

「青葉、教えてくれ。どうして泣いてるんだ?」

「だってぇ…れんじが……れんじが……」

「俺か? 俺ならここにいるぞ」

「れんじが、死んじゃうかと思ったぁ……」

 

そう言い切ると、青葉は俺の胸に顔を埋め強く抱きついた

俺は無理に喋らせることもないと思い、青葉をそっと抱きしめてやる

しかし、俺が死んじゃう?

どういうこっちゃ……?

 

「…………っ!」

 

困ったと思い天井を見上げたところで、昨日のことを思い出した

昨夜はギルドに賞金首の速報が入り、他の賞金稼ぎと一緒にホルンの森に入ったんだ

そしたら、そこには赤い肌をした化け物――鬼がいた

そう、鬼はとても人の勝てる生物じゃなかった

賞金稼ぎ達は一瞬で殺られ、俺は青葉だけでも、と……

 

「……青葉、昨日何があったんだ? 俺は、なぜ助かってる?」

 

鬼に挑み、すぐに殺されかけたのは覚えている

頭を掴まれ、そこからは……記憶がない

しかし、骨も何本か折れていた

とても助かる見込みはなかったはずだ

その俺が五体満足でここにいる

しかも、大して体に怪我などはないようだし…………

 

「……私にも、よくわからない」

「? どういうことだ?」

「……蓮治が倒された後、すぐに白い女の子が現れたの。その子が鬼を倒して、蓮治を……助けてくれたと思うの」

「?」

 

まだ気が動転しているのだろうか

青葉はまだ落ち着かない様子ではあったが、がんばって話してくれた

話してくれたが……イマイチわからない

白い女の子

こいつが鬼を倒して、瀕死状態の俺も助けてくれた?

まるで御伽噺だ

そんな都合のいい話、眉唾ものとしか思えない……だが、青葉が言うんだ

事実に違いない……ちょっと、信じられないけど

 

「起きたら、私もこの病院で寝ていて……よく、わからないの」

「そうか。……心配かけて、ごめんな」

「ううんっ! ……私こそ、守ってあげられなくてごめん。役に、立ってあげられなく――」

「気にするな。俺もおまえに同じこと言いたいんだから」

「っ――」

 

青葉を強く抱きしめると、俺の腕の中でまた泣いた

気丈な青葉がここまで泣くのだ……相当、酷い状態だったんだろう、俺は……

そんな俺を救うことができた白い女の子

ますます何者だ?

気にはなるが、なによりも生きていることに感謝しよう

青葉が傷ついてないことに感謝しよう

白い女の子――いや、白の女神様

あなたに俺は心から感謝している……本当にありがとう、と伝えたい

 

「この街でやらなきゃならないことができたな」

 

 

 

 

 

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